2004年75

 


日本ガス協会 安西会長 記者会見発言要旨


 

はじめに

本日は、先の総合資源エネルギー調査会の「需給部会」で中間とりまとめ原案が示された「長期エネルギー需給見通し」に対するガス協会としての受け止めとそれを踏まえた今後の取り組みについて、述べさせていただく。

 

「長期エネルギー需給見通し」に対する受け止めについて

今回の需給見通しは、様々な変化を視野に入れて策定されたエネルギーと環境に関する超長期の国家戦略であり、画期的なものである。

その中で、我が国が、柔軟かつ強靭なエネルギー需給構造を確立し、省エネルギーを実現するために、天然ガス利用の拡大と分散型エネルギーの活用を図ることが強調されており、正しい指摘である。私どもはこれまで、都市ガス原料の天然ガス化と、コージェネレーションの普及をはじめとする分散型エネルギーシステムの構築に力を入れてきたが、これはまさしく今後の我が国のエネルギー政策を先取りしたものと自負している。

 

天然ガスの普及・拡大について

2003年度の都市ガス販売量は286億mで、1978年度以降、26年連続の増加となった。中でも工業用の伸びが著しく、産業界でも環境に優しい天然ガスの利用拡大が進んでいる。

このような天然ガス需要の飛躍的な伸びを支えているのは、コージェネレーション、ガス冷房、天然ガス自動車といった高効率システムの普及・拡大である。

「コージェネレーションシステム」は、この5年間、毎年10数%ずつの高い伸びを示している。

工業用や商業用の普及・拡大だけでなく、昨年3月には、家庭用ガスエンジン給湯器の販売も開始した。「ガス冷房」については、2004年3月末には、推定で全国の総冷房需要の20%強を占めるに至っている。「天然ガス自動車」は、2004年3月末に普及台数が2万台を超え、天然ガススタンドも271箇所となった。天然ガススタンドは、将来の水素エネルギー社会における基本的なインフラとしても活用が可能であり、今後、整備拡充が必要である。

 

今後の取り組みについて

我が国での天然ガスの利用は急速に拡大しているが、私ども都市ガス事業者はこれに甘んじることなく、将来に向けて、分散型エネルギーの普及・拡大に力を傾注していきたい。

その切り札として期待されているのが「燃料電池」である。今年度中に1kWの家庭用燃料電池を市場投入する計画であり、ガスエンジン給湯器と合わせて、家庭で電気を作る「マイホーム発電」の普及を図っていく。
 
分散型エネルギーの活用をさらに加速するためには、関係者との協調による系統連系への対応や、複数の建物で電気や熱などのエネルギーを相互に融通し、利用し合う「面的融通」の拡大が必要である。また、都市再開発計画の中に分散型エネルギーシステムの導入を標準化するなど、技術的、制度的な取り組みを強力に進めることが課題となる。

 

環境問題への取り組みについて

都市ガス事業者は、環境への取り組みも着実に進めてきた。その結果、2002年度の都市ガス製造量が1990年度に比べ1.7倍に増加したにもかかわらず、製造・供給段階でのCO2排出量は116万トンから84万トンへと30%近く減少した。2010年度には、さらに73万トンにまで削減する目標である。

また、天然ガスを利用した高効率で省エネルギー性の高い機器やシステムの開発・普及により、需要サイドでの省エネルギーにも取り組んでいる。加えて、お客さまが自らの工夫でさらに省エネルギーを進めることができるように、情報提供ならびに提案にも力を入れている。

今後は、天然ガスによる分散型エネルギーシステムの普及・拡大を通じて、さらに省エネルギーに貢献していきたい。「需給部会」の報告書にも分散型エネルギーの省エネルギー効果については、ヒートポンプの普及など他の施策と比較しても相当に高いということが示されている。

省エネルギーや環境問題は、政府、事業者、国民というエネルギーに関わる全ての者が、各々創意工夫を凝らし、規制ではなくビジネスとして、また重い税を課すのではなく利用者の意思によって、地道に取り組んでいくことが重要である。

 

最後に

21世紀は天然ガスの時代であり、世界的にも、特にアジア・太平洋地域での需要拡大が予測されている。そのような状況の中で、天然ガスの既存プロジェクトの拡張や多くの新規プロジェクト開発が進み、市場自体が大きく成長すると考えられる。また、コストダウンや各プロジェクト間の競争の進展を背景に、原油価格に対するLNGの相対価格は低下傾向が続くと見込まれている。

まさに、天然ガスの果たす役割は、我が国のエネルギーセキュリティ上、環境問題への対応上、ますます重要なものになると確信している。

私ども都市ガス事業者は、環境調和型社会の実現に向け、これまで長年にわたって培ってきた地域のお客さまとの信頼関係をより深めながら、自らの強みを十二分に活かして都市ガスの価値をさらに高め、天然ガスの普及拡大に邁進していく所存である。

 

以 上