2004年10月28日

 

 

日本ガス協会 安西会長 記者会見発言要旨

                                      

 

■「新潟県中越地震」への対応について

都市ガス事業の現況について説明する前に、この度の『新潟県中越地震』に関して、述べさせていただく。

まず、今回の地震による被災者の皆様に対して、心よりお見舞い申し上げる。都市ガス事業者については、北陸ガスおよび市営・町営の5事業者において、5万6千件の都市ガス供給を停止した。ガス協会としては、10月24日の朝、先遣隊を派遣し、災害状況の調査と必要な応援体制の見極めを行った。その結果、1日も早い復旧を目指して、今日現在、約1100名で懸命の作業を行っている。

復旧については、長岡市および見附市では11月3日頃まで、その他地区では道路復旧などの条件によるが、被害の著しい川口町を除き11月7日頃となる見通しである。一軒一軒のお客さまの安全確認を確実に行うため、日数が必要となる点について、ぜひともご理解をいただきたい。

 また、この間の生活支援としては、北陸ガスでは26日からカセットコンロ1万台を貸し出している。ガス協会としても、新潟県からの要請を受け、市町村の対策本部にカセットコンロ7千台、ボンベ7万本を無償で提供している。

 

■都市ガス事業の現況について

本日午前中に「ガスの記念日」の式典を行ってきたが、「ガスの記念日」とは、初めてガス燈が横浜で灯され、わが国で都市ガス事業がスタートした明治5年10月31日を記念して、昭和47年に定められたものである。

132年の歴史を経て、わが国の都市ガス事業は、現在、227事業者からなり、昨年度末で、お客さま件数が2,711万件、ガス販売量は286億mに達した。本年度上半期は夏の猛暑により家庭用の販売量が大きく落ち込んだが、工業用やビル冷房用等の需要が増加し、全体では対前年を上回る伸びを示している。都市ガス事業は、今や、国民生活や産業活動に欠かすことのできないエネルギー産業として、大きな発展を遂げている。

しかしながら一方で、電力会社によるオール電化攻勢や、規制緩和による大口分野への新規参入等により、現在、都市ガス事業を取り巻く環境は大変厳しいものがある。都市ガス各社は生き残りをかけて競争に挑んでいるが、ガス協会としても、暖かさ、おいしさといった炎の持つ良さ、ガス機器の利便性・安全性、都市ガスの環境への優位性等を訴えて、事業者の支援をしていきたいと考えている。

特に、天然ガスの環境優位性については、今日、「環境調和型社会」の実現が強く求められている中では、是非ともご理解いただきたい点である。

 

■地球環境問題への対応と天然ガスの普及拡大について

 産業界は、日本経団連の環境自主行動計画に沿って、これまで、CO排出量の削減への取り組みを着実に進めてきた。私ども都市ガス事業者も、業界を挙げて取り組んだ結果、2003年度の実績は、都市ガス製造量が1990年度に比べ1.8倍に増加したにもかかわらず、製造・供給段階でのCO排出量は116万トンから76万トンへと35%近く減少した。

 このような産業界における努力にもかかわらず、民生・運輸部門において大きな増加が見られたため、我が国全体のCO排出量は増加を続けている。ここにきてロシアが京都議定書を批准するのが確実となり、いよいよ来年春にも議定書が発効する見通しとなったことから、現在、温室効果ガスの削減目標達成に向けた施策について、活発な議論が行われている。

 その中で、CO排出量を割り当てたり、温暖化対策税を課すといった方策が検討されているが、私どもは、日本経団連と同様に、これらには反対である。目標達成に向けては、事業者、国民の意思によって取組んでいくことが肝要と考えており、それが可能であることは、先般の長期エネルギー需給見通しの中間報告において示されたとおりである。

 目標達成に向けては相当の努力を要することは十分承知しているが、私どもは、報告書の中でも活用を図ることが強調された「天然ガスによる分散型エネルギーシステム」の普及・拡大を通じて、さらなるCO削減に貢献していきたいと考えている。

 平成12年の新エネルギー部会の資料によると、日本全体で、天然ガスによる分散型エネルギーシステムの潜在需要は、5,570万kWである。これに対応するCOの削減量を「火力平均排出原単位」を用いて適正に算定すると、7,314万トンとなる。これは、1990年における日本の温室効果ガス排出量11億8,700万トンの6.2%に相当する。まさに、分散型エネルギーシステムの普及・拡大は環境の面からも私どもに与えられたチャレンジすべき課題であると考えている。

 分散型エネルギーシステムの普及拡大のためには、エネルギーの面的融通の促進をはじめ、関係者との協調による系統連携への対応や、都市再開発計画の中に分散型エネルギーシステムの導入を標準化するなどの、技術的、制度的な取り組みを強力に進めることが必要である。特に、「エネルギーの面的融通」の促進については、内閣府における各省連携事業にも取り上げられており、先般、経済産業省を中心に関係省庁、学識経験者および関連業界等による研究会が立ち上がった。私どもも、制度面、技術面における促進策を積極的に議論していきたいと思う。

 また、家庭におけるCO削減の切り札として期待されている家庭用燃料電池については、世界初の商用機が、来年3月に完成する首相公邸に設置されることが決まった。将来の水素エネルギー社会実現の一翼を担う技術として、2008年の本格導入を目標に、その普及拡大に最大限の努力を傾注していく。加えて、こうした天然ガスを利用した高効率で省エネルギー性の高い新たな機器やシステムなどの技術開発にも積極的に取組んでいく。

 さらに、お客さまの省エネルギー意識に訴えかけ、お客さまが自らの工夫で省エネルギーを進めることができるように、エネルギーの有効利用を身近に感じる情報提供ならびに提案を種々行っていく所存である。

                                        以 上