2005年7月5


日本ガス協会 安西会長 記者会見発言要旨

                                      


■石油価格の上昇とLNG価格の動向

最近の原油価格の高騰は、我が国の経済界に大きな影響を及ぼし、多くの企業が価格高止まりの長期化による業績悪化を懸念しているところであるが、私どももエネルギー供給者として原油価格の動向には細心の注意を払っている。
 石油価格の上昇がもたらすLNG価格への連動について申し上げると、LNG価格は、日本の輸入原油価格などにリンクする方式をとっているため、原油価格の高騰に伴い、現在は高めに振れている。ただし、価格の決定方式には、原油価格の急激な変動に備え、多くのLNGプロジェクトでその影響を緩和するための仕組みが盛り込まれているため、LNG価格の変動は原油価格の変動より小さくなっている。最近では、既存LNGプロジェクトの契約更改や新規プロジェクトの導入の機会をとらえて価格交渉を行い、引き下げに取り組んでいる。さらには、生産・液化段階でのコストダウンやLNGの船建造費のコストダウンなどが図られていることから、原油との相対価格は低下傾向が続くものと見込まれている。
 また天然ガスの需要は、世界的にも、優れた環境性を背景に、特に中国をはじめとするアジア・太平洋地域での拡大が予測されている。そのような状況の中で、多くの新規プロジェクトの開発などが順調に進んでいけば、2015年頃までは需給バランスが大きく崩れることはないと見られている。すなわち、天然ガスの果たす役割は、環境問題に対応する上でも、また我が国のエネルギーセキュリティ上からもますます重要なものになると認識している。

 

■CO削減に向けた取り組み

CO削減に向けた都市ガス業界の取り組みについて、消費段階に絞って若干述べさせていただく。
 本年2月に京都議定書が発効し、国内では「京都議定書目標達成計画」の閣議決定や「改正地球温暖化対策推進法」が成立するなど、今後、国民生活や経済活動において環境問題への取り組みがますます重要な位置付けを占めるものと考えている。


 まず、私ども都市ガス事業者は、産業用における天然ガスへの燃料転換の促進や、コージェネレーション等の分散型エネルギーシステムの普及拡大に努めている。
 「天然ガスコージェネレーション」の2005年3月末の累計稼働実績は、313万kWであり、前年度末に比べ約72万kW増加し、ほぼ30%プラスの着実な伸びを示している。しかしながら、全発電設備容量に対する天然ガスコージェネレーションの割合は、ようやく1%を超えたというのが現状である。
 天然ガスコージェネレーションは、「京都議定書目標達成計画」の中で2010年において現在の1.6倍にあたる498万kWの導入の可能性が示されており、そのCO
排出量の削減効果は1,140万トンと見込まれている。目標達成に向けて分散型エネルギーシステムの普及拡大に努力を傾注していくが、そのためには、「エネルギーの面的な利用の促進」が有効な手段の一つであり、「京都議定書目標達成計画」の中では、CO排出量削減対策の第1番目に掲げられたところである。1つの建物における天然ガスコージェネレーションの排熱を他の建物にも任意に融通するような新しいビジネスモデルが進展すれば、大規模開発などの新築の建物だけではなく、膨大なストックのある既築の建物についても省エネルギーが図れるものと考える。都市ガス業界は、その具体化に向けて、関係者と協力してモデル事業の検討を行うこととしている。
 また、天然ガスコージェネレーションの高効率化に資する技術開発にも積極的に取り組んでおり、特にガスエンジンの高発電効率化は目覚しく、6,000kWクラスの機種では発電効率が45%台に達し、電力会社の火力発電所の需要端効率と同等のレベルとなった。さらに、排熱を有効利用している分が、省エネルギーに寄与することは申すまでもない。
 今後もより一層の高効率化、多様化、コストダウンを目指して、技術開発を積極的に推進していく所存である。

 一方で、京都議定書の目標達成に向けて、家庭用分野の省エネルギー対策が極めて重要な課題となってくる。その中でも大きなウエイトを占める給湯分野においては、「お客さまの快適なご生活」と「環境負荷の低減」という2つの命題を両立させる必要がある。
 私どもは、お客様の多様なニーズに合わせ、3つの省エネ機器を揃え、その普及拡大を図っている。
 潜熱回収型給湯器「エコジョーズ」は、高温の排気をもう一度利用することによって効率性を高め、CO
を約13%削減するものであり、ガスエンジン給湯器「エコウィル」は、世界初の家庭用コージェネレーションシステムで、ご家庭で電気とお湯を同時に作るため、総合効率に優れ、COを約30%削減することができる。
 さらには、最大約40%のCO
削減効果が期待できる「家庭用燃料電池」は、今年度中に都市ガスとLPガスを合わせて400台を超える固体高分子形燃料電池が一般家庭に設置される見込みであるが、将来の本格的普及に向けて、お客さま先での実測データを取得し、製品の改良につなげていきたいと思う。
さらには、ご家庭において、お客さまが自らの工夫で省エネルギーを進めることができるように、エネルギーの有効利用を身近に感じられる情報提供やITを活用したエネルギー最適管理の仕組みの提案など、省エネ意識の醸成にも積極的に努めていく。

 以上のように、私どもは京都議定書目標達成計画に沿って、天然ガスの普及拡大を図り、地球環境を保全しつつ持続的な発展を可能にする「環境調和型社会」の実現に貢献していく所存である。 

 

                                        以 上