平成18年4月12日


日本ガス協会 安西会長 記者会見発言要旨



■はじめに
都市ガス業界を取り巻く環境は、今後ますます厳しくなっていくと認識しているが、一方で、わが国のエネルギー政策において、環境性、供給安定性に優れた天然ガスの位置付けは更に高まってきており、保安の確保と安定供給をベースに、「天然ガスの普及拡大を図ること」が我々の最重要課題であると考える。このため、今年度の日本ガス協会の重点課題として、「天然ガスのお客さま価値向上」、「分散型エネルギーの普及拡大」、「エネルギー政策課題への取り組み」の三点を推進していく。
特に、「エネルギー政策課題への取り組み」については、現在、「新・国家エネルギー戦略」の策定や「エネルギー基本計画」の見直しに関して議論が行われており、いずれも昨今の国際エネルギー市場における構造変化を受けて、エネルギー安全保障に軸足を置いた政策が構築されるものと認識している。
資源小国である我が国のエネルギーセキュリティ強化のためには、上流側での海外からのエネルギー資源調達における施策と、下流側での国内における省エネルギーやエネルギーの有効利用の推進の施策を両面から進めていくことが必要と考える。

■天然ガス(LNG)の今後の動向
天然ガスの需要は、優れた環境性を背景に世界的に拡大する見通しであり、その中でもLNGはパイプラインが整備された欧米においても需要の拡大が見込まれている。またアジアにおいては、今後の経済成長を背景にエネルギー需要が拡大し、巨大な潜在需要があるといわれる中国、インドで、太平洋を隔てた北米西海岸とともにLNGの導入計画が多数進められている。
しかしながら、中国、インドにおいては原油高に伴うLNG価格の上昇問題等があり、また、北米では立地の問題等があるため、いずれにおいてもLNGの導入量は限定的であるとの見方がされつつある。
一方、供給については、豪州、サハリン、中東などにおいて豊富な埋蔵量があり、現在、アジア・太平洋向けのLNGプロジェクトが多数計画されている。この中には、事業化検討中のプロジェクトだけではなく、既に供給先が決定し確実に立ち上がるものも数多く含まれている。現在稼働中のものや確実に立ち上がるプロジェクトに加え、事業化検討中のプロジェクトが概ね予定どおり立ち上がれば、今後、天然ガスの需要が拡大しても、それに見合う供給能力は確保されるものと見ている。
中・長期的には、アジア・太平洋地域のLNGの需給が逼迫する可能性は低いと考えられる。

■上流側での取り組み
上流側では、LNGの契約はこれまでも20年前後の長期契約をベースとして供給源の分散化や多様化に努めてきた。これらの取り組みに加え、最近では上流権益の取得やLNG船の所有によりコストダウンを図るとともに、安定供給の更なる強化に努めている。
また、産ガス国とは長期契約に基づいて緊密な関係を築いてきたが、今後は産ガス国のみならず近隣のガス輸入国に対しても、省エネ技術に関する協力やガス化推進などの貢献を通じて官民あげての一層の関係強化を図っていく必要があると認識している。

■下流側での取り組み
我が国の一次エネルギー消費に占める天然ガスのシェアは12.6%で、欧米に比べて半分程度であり、天然ガスの環境性、供給安定性をさらに活かしたエネルギー需給構造に変えていくことが、我が国のエネルギーセキュリティ強化の取り組みとして重要であると考える。そのためには、天然ガスを広域かつ高度に利用していくことが必要である。
そこで、天然ガスの特性を活かした需要開拓として、省エネルギー性が高いシステム・機器の開発・普及に取り組んでいる。例えば、家庭用分野におきましては、高効率給湯器として潜熱回収型給湯器「エコジョーズ」、ガスエンジン給湯器「エコウィル」、燃料電池などの普及拡大や更なる高効率化などを目指した技術開発に努めている。
産業用分野においては、高発電効率化が目覚しいガスエンジンなどを利用して天然ガスへの燃料転換を促進している。運輸部門においても、燃料の多様化や環境等の観点から、天然ガス自動車の普及・拡大を図っており、企業や自治体のトラックや塵芥車、路線バスを中心に着実に導入が進んでいる。
発電時の排熱が有効利用できる地域や建物では、コージェネレーションなどの分散型電源を大規模集中電源と適切に組み合わせる形で推進している。特に、エネルギー需要密度の高い都市部においては、コージェネレーションなどで得られるエネルギーの面的な利用が期待できるので、自治体などの関係者のご協力を得ながら取り組んでいく。
なお、拡大する天然ガスの需要に対応するための供給インフラは着実に整備されており、現在、需要地間を結ぶ広域パイプラインについても各地で建設・計画が進んでいる。供給インフラ整備の際は、都市ガス事業者として、経済性の確保を大前提に取り組んでいる。

■終わりに
これらの取り組みは、現行の「エネルギー基本計画」や「2030年のエネルギー需給展望」、「京都議定書目標達成計画」に掲げられている施策に沿ったものである。天然ガスの普及拡大を図るというこれらの施策やガス事業者の上流、下流における取り組みが、現在進められている「新・国家エネルギー戦略」の策定や「エネルギー基本計画」の見直しの議論において、我が国のエネルギーセキュリティを強化する上でも、引続き有効であることを、改めて関係者の方々にご理解いただけるよう努力していく。


以 上