服部 幸應さん

毎日新聞「食」移動支局、ウィズガスCLUB共催〜食育フォーラム〜

「食育のすすめ」

服部学園理事長・服部 幸應さん

学校法人服部学園理事長、服部栄養専門学校校長、医学博士、内閣府「食育推進会議」委員。「料理の鉄人」などテレビでおなじみの食研究家。食育の第一人者として講演会やメディアを通した普及活動を行っている。また食育、料理を通じた地球環境保護活動にも精力的に取り組んでいる。

日本の食料自給率をご存じですか。毎年4〜5回、海外に行きますが、海外の人に比べ日本人の意識は低い。学校で食料を安全保障の問題ととらえる教育が行われていないからだと思う。

日本の食料自給率は現在40パーセント程度。農水省は45パーセントまで上げようと必死になっているが、残念ながら上がっていない。

私たちは常に自給率を意識することが必要で、それにはまず地元で取れたものを買うようにして心がけて欲しい。また、農業従事者に対して働いただけの対価を得られるようにしないといけない。

自国の食料は他国に売らないという国も増えている。自分の国で食糧を生産しないと、今後大変なことになる。

私が調べたところ、地球の中で豊かな生活をしているのはわずか8パーセント。日本人はすべてここに入っている。11億人は慢性的な水不足に苦しんでおり、多くが餓死している。こうした世界の状況もしっかり子どもたちに教えるべきだ。

凶悪、無差別犯罪もなぜこれほど増えたか。それは食卓で家族が食事をする機会が減ったからだと思う。

子どもへの接し方を考えると、0歳から2、3歳ころは絵本など読み聞かせ、親の温かさを知らせる時期だと思う。

そして3から8歳は食育がまさに必要になる。食卓で子どもを観察しながら、いろいろ注意する。ここでしつけると、人から注意されることに慣れることができる。これをしておかないと、大人になって人から注意されるとすぐ切れる、犯罪につながる人間ができる。だから食卓が大切だ。

食育基本法とはつまり食卓基本法のことなんです。特に3から8歳の6年間が大切です。

現在の子どもは、この時期に家族と食卓を囲むことが極端に減っている。これができないと、一体、いつしつけるのですか。残念ながら、食卓でみんなが食事を取らなくなり衣食住の伝承と、その家の慣習が全部とぎれてしまった。

私の持論では、きちんとしつければ14歳までで理性を持った子供ができあがる。日本では親を、先生を尊敬するという子どもが諸外国にくらべ極端に少ないが、こうした数字も食育がしっかりしていないことが背景にあるのかもしれない。

これからの日本はもっともっと食育が必要になると考えている。 私は衣食住の伝承は非常に大切と考えて日々、活動をしている。そして子どもたちには食料問題を世界的な視点で考えられる人になって欲しい。

(2008年11月22日・東京都江東区豊洲「東京ガス ガスの科学館」にて)