永山 久夫さん

毎日新聞「食」移動支局、ウィズガスCLUB共催〜食育フォーラム〜

古代食に学ぶ『食育』

食文化史研究化・永山 久夫さん

食文化史研究家。食文化研究所、総合長寿食研究所所長。西武文理大客員教授。古代から明治時代までの食事復元研究の第一人者。長寿食や郷土食を研究している。長寿村の食生活の調査も精力的に行っている。

倭の時代から、日本の食文化がどのように伝承されてきたかおさらいしたい。

ヒトは500万年前に進化の過程で草原に出て、6000年ほど前に川のほとりに都市文明を築いた。大きい時の流れから言えば森や自然と共存してきた。だから自然から離れると、ストレスやプレッシャーを感じる。ストレス要素を少なくし、健康で長生きするために和食は理想的である。

魏志倭人伝に「倭人は大変長生き」とか「生菜を食べていた」とある。生菜には生のおかずという意味がある。日本料理で言えばさしみです。さしみは魚肉を食べやすく切って並べただけだが、日本人は一番おいしい料理として大事にしてきた。 また後漢書倭伝には「春も夏も菜茹(サイジョ)を生ず」とある。これは、野菜を茹でる野菜スープで、味噌汁のルーツかもしれない。野菜スープはいろいろな野菜を煮出すので、抗酸化成分がたくさん取れる。それは、長寿につながり、免疫力を強くする。

最近は環境の悪化で、オゾン層に穴が開き、紫外線が、人間の生命力を弱くする活性酸素が発生する。

日本人には1日と15日に小豆ご飯を食べる習慣があった。ビタミンB1をたくさん含む小豆ご飯を食べると、疲れが取れることを経験で知っていた。

日本は明確な四季がある。春夏秋冬、季節や風土に合った野菜を育て魚をとる。それを上手に組み合わせて食べてきたのが日本人であり、和食の最大の特徴だ。

和食文化の形成には4つの要素がある。エネルギーが渦巻いている「走り」、味や栄養が充実している「旬」、甘味や酸味が強く酵素が発生する「名残り」、そして料理を生かす調味料などをさす「時なし」です。名残りを食べたら来年の実りまで待つ。折り目をつけた食べ方。一年中食べていたら人間の感性が鈍くなる。

昔はどの家でも味噌を作った。味噌蔵や味噌小屋の柱や土には、何十年何百年もかけて酵母や酵素、乳酸菌、麹菌など、その家にしかいない居つきの菌が発生した。その菌が味噌や漬物、ぬか漬けを作り、家の人の健康を守った。

郷土食は、空気や水、調味料、微生物、作った人の息遣いを何百年もかけて伝えてきた伝統や文化です。その土地に住んでいる人が食べる必要がある要素を含んでいる。

土と太陽と雨は命を生み出す。日本人は日本の風土で生まれた野菜が合う。地産地消、自分の住んでいるところに近い物を食べてほしい。そして子どもや孫も使う土を汚染してはいけないと強く思う。

(2008年12月8日・・大阪府吹田市千里万博公園「大阪ガス生活誕生館DILIPA」にて)