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審査委員長

 

審査委員長 小玉祐一郎〔建築家・神戸芸術工科大学教授〕

 

〔審査総評〕
 今回のコンペで求められたのは、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県に現存する街区を対象としたソーラータウンの計画。再開発でも新開発でもよいが、転機を迎えている大都市や地方都市、都心や郊外に広がる住宅地にエネルギー・プランニングの視点を持ち込み、近未来の持続可能なまちづくりを提案することがテーマだ。それぞれの地域の自然やコミュニティの特性を生かした計画に太陽熱利用を組み込むことが条件の一つ。太陽光発電のような活用もあるが、給湯や暖房のように最終使用温度が低い用途には、熱利用が効率的だ。このメリットを生かしたエネルギーシステムを考え、都市や建築の計画に組み込み、さまざまなパッシブデザインも取り込んで、自然と共生する空間的な魅力や親自然的な快適さを引き出すことが課題だ。


 岩倉・水野案は、横浜の急峻な斜面住宅地に「スイッチバック」のようなジグザク歩行路を配し、変化に富んだ楽しい生活空間を創るとともに、要所要所に配置された公共施設でつくられた熱を地域で効率よく使うエネルギーシステムも提案した。地形の利点を空間的にもエネルギー的にも巧みに引き出し、バリアフリーや防災にも配慮して最優秀案に選ばれた。


 アイデア賞になった原田・大庭案も、斜面地の住宅地計画だ。千葉・鋸南町の地域特産の石を多用し、石の熱的特性を生かしながら、自然な熱の流れを作り出している。ほのぼのとした「温かさ」を随所に演出するアイデアは出色で、高く評価したが、給湯への配慮がなく、残念ながら上位入賞を逃がした。


 優秀賞となった船津・清水・高山案は、浅草界隈の木造密集地が対象だ。昔からのまちなみ、生活空間の豊かさを保全するためにも必要なエネルギーネットワークの提案だ。銭湯などの公共施設でのソーラー集熱やコジェネの導入によって地域をカバーする熱供給システムを構築した。街の防災や街区の新陳代謝などが必須の地域の活性化計画に、エネルギー計画も組み合わせる重要性を強調した。


 同じく優秀賞に選ばれた新谷・Pham・紺世の案は、多摩ニュータウンの更新がテーマ。現在のタワー型住棟を低層建築に建て替え、接地性の高い居住空間にする提案だ。結果として生じた大面積の陸屋根をソーラー施設や屋上庭園に使うアイデアはよいが、巨大化した室内空間に外部空間や自然との接点やインターフェースをどのように付与するか、建築的な工夫が望まれるところだ。


 もう一つのアイデア賞となった西村・広瀬・秋元・林・高森案は、かつて最新鋭インフラとして整備されながら実用化できなかった真空ごみ収集システムのリノベーションを提案。地下共同溝をエネルギーネットワークとして再生し、ごみ処理センターはエネルギーハブとして、さまざまな再生利用可能エネルギーの創出と制御の拠点にするアイデア。明快な技術提案だが、これによって変わる生活空間など、ソフト面での提案が示されなかったのは残念。


審査委員

 

審査委員 秋元孝之〔芝浦工業大学教授〕

 

○『“FLAT”apartment』

 東京都八王子市の起伏に富んだ丘陵地である自然の大地に、人工の大地である建物群を展開することによって、世代を超えた住民達の交流やエネルギー消費の平準化を目指す提案である。この地域には大学生、高齢者、核家族という3つの住民層があるが、学生寮やサービス付き高齢者住宅、共用食堂や浴場、公共施設、等のハードを計画した。そこに高圧一括受電や太陽熱等の再生可能エネルギーによるエネルギー消費の平準化、等のソフトがバランスよく計画されている。低層高密建物の屋上を利用したソーラーパネルの日射取得面積の拡大や、通風に配慮した建物配置計画の検討には好感が持てるが、具体的な設備容量等の数値目標について触れられていないのが少々残念であった。


○『Earth perspire/体温を持つまち』

 千葉県鋸南町は石工業が盛んなまちである。そこで産出される砕石の中に多く見られる温石(おんじゃく)を利用したパッシブソーラーシステムを構築するというコンセプトである。礫状の保温性のある石にダイレクトゲインの太陽熱を蓄熱することによって、バナキュラーなまちづくりを目指している。ソーラーパネルの提案が見られないこと、冬季に冷却された温石の悪影響に関しての検討が十分になされていないこと等の課題も散見されたが、温石による垣や岩盤浴場、建築を提案して、まちに熱を持たせるという学生ならではの自由な発想が光る作品であった。最小限の機械エネルギーとの併用を緻密に検討すれば、現実的な提案になりそうだ。

審査委員

 

審査委員 小泉雅生〔建築家・首都大学東京教授〕

 

 今回のコンペでは、現存する街区を対象として、地域特性を活かした提案を募るものであった。ソーラーエネルギーを考えていくにあたっては、既にそこにあるポテンシャルを活かしていくという姿勢、思想が大切である。そこで議論の幅を拡げるべく、既存の街の中で見過ごされているものを再検証する中でエネルギーコンシャスな街のあり方を考えるといった形で、視点を拡げてとらえることとした。結果として、公開審査に残った5つの作品は、着目した地域特性が異なり、エネルギー利用のスタンスもそれぞれであり、バラエティに富んだものとなった。


 上述の観点から、石切り場という地域特性を活かし、熱容量の大きい温石に着目したまちづくりを提案した「Earth perspire/体温を持つまち」は刺激的であった。夏にどうなるのか不安な部分は残るが、見えないエネルギーを可視化する街の姿が提示され、示唆的である。また、使われなくなった地下のゴミ収集路を、新たなエネルギー利用のルートとして再生させる「ENEHUB」にも同様の視点が読み取られた。意識されなくなった都市インフラに目を向け、既にあるものを活かしていく姿勢である。惜しむらくはシステム提案に終わっていることで、その見せ方についての提案もほしかった。「太陽熱巡る坂道のある丘」は、地形の持つポテンシャルをエネルギーネットワークによって強化するという提案であり、現実的でもあり可能性を感じた。
刺激的な公開審査ではあったが、多角的な論点があっただけに、もう少し時間をかけて意見交換をしたいところであった。

審査委員

 

審査委員 下田吉之〔大阪大学教授〕

 

 今回のコンペティションにあたり、事前の調査の結果も踏まえて筆者が期待し、審査のポイントとしたのは以下の3点であった。

① 「再生可能エネルギー社会の可視化」再生可能エネルギー社会が到来したことを、都市景観の中で明確にアピールできるようなデザイン。ただし、定量的な検討に基づいてエネルギーバランスと機器のスケールが整合していること。

② 「スローライフの象徴としての太陽熱」半導体の光電反応といういわゆるハイテクにもとづく太陽光発電と異なり、市民に近づきやすい技術である太陽熱利用システムの導入を、居住者の生活に反映すること。

③ 「土地利用やランドスケープデザインの工夫」建築でなく、街を対象とするうえで建物の配置や空地の確保、地形の活用など面的な提案は重要。


 その観点から見て、最優秀作の「太陽熱巡る坂道のある丘」は上記3点に対してバランス良く配慮が行き届いていたことを評価した。また、優秀賞「太陽でつながる街」は我が国の伝統的な景観である木密地域を対象とし、地域の交流施設として銭湯や学校での太陽熱利用を提案している点、坪庭の復元による緑地増大などを含めている点などを評価した。更に、ヒートアイランドへの影響を考慮し、表面温度の上昇を抑えた減圧沸騰ソーラーパネルの導入を試みているなど環境工学的な問題設定とその解決策の提示について極めて優秀な提案が含まれていた点が特筆される。ただ、できれば伝統的な木密地域の景観そのものに上手く太陽熱集熱器を組み込むデザイン的な提案を含めて欲しかった。

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