戸建住宅部門
優秀賞

 

橋本 剛
ナスカ

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【作品講評 小泉雅生】
空の気分をうつすイエ

 

太陽エネルギーを効率よく利用するには、周囲の建物や樹木の影響を受けにくい屋根面が有効である。だからSOLAMOの設置位置として、まず屋根がクローズアップされることとなる。この提案は、居住域の上部に大きな屋根を架け渡し、そこで集光や集熱、集水を行っていくというものである。足下近くまで葺き下ろされた屋根の形が特徴的であり、さらに屋根面全体に窓やSOLAMOが展開し、魅力的な建物の表情がつくり出されている。SOLAMOの設置位置としてはオーソドックスだが、SOLAMO単体だけでなく窓と組み合わせることによって、軽快な外観とすることに成功している。また、機器効率という観点からも、屋根を途中で折り曲げ、夏季の集熱と冬季の集熱とに対応できるように配慮し、かつ集熱上不利な冬季に対応した屋根面積を大きく確保するなど、設備機器側の理屈にもきちんと対応している。SOLAMOを通じて屋根のあり方を考える、という強いメッセージ性をもった提案といえよう。単に設備機器を配するだけでなく、そこから導き出される諸条件を活かし、建築表現へと高めていこうという意図が読み取られる。
一方、せっかくの特徴的な屋根形状が、内部空間や内部環境に十分に活かされていないように感じられた。大屋根の下の大らかな空間を感じられる視点を設けたり、天井の高さを活かして光を採り入れたり空気の流れをつくり出したり、といった形で、大きな屋根をさらに発展させられたのではないか。SOLAMOを載せる屋根がつくり出すさまざまな可能性が感じられただけに、惜しまれた。