集合住宅部門
優秀賞

 

山上 健 犬飼高嘉*
(山上建築設計/株式会社伊藤建築設計事務所*)

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【作品講評 秋元孝之】
ECOFRAME

 

オリジナルのSOLAMOの集熱パネルは、集合住宅の各戸バルコニーの手すりと一体化した垂直に設置して太陽熱を集め、給湯に利用するというものであった。この形態はそもそも現在の一般的な集合住宅のスタイルを変えずに、「太陽熱利用技術を野暮なデザインにならないように組み込む」という命題に応えたものである。それに対して本提案では、「集合住宅ならでは」の解法を論理的に示してくれている。
再生可能エネルギー利用システムを採用する際には、システムの設備容量ではなく、実稼動可能な時間軸を考慮した設備利用率を念頭に計画することが大事だ。太陽光発電や太陽熱利用のシステムは、十分な太陽エネルギーを捕捉することができる天候や時間帯に限って本来の性能を発揮することが出来る。併せてバッファとしての蓄電池や蓄熱層といった器(ストレージ)が有効となる。集まって住まう住宅群では、「各戸で融通する」というルールを適用することが出来れば、過大なストレージは必要ない。この住棟セントラルのアイデアの根幹を為す「エコフレーム」を住戸間に配した計画は、メンテナンスを容易にするなど長期間にわたっての運用にも適している。
すべての設備を共用にするのではなく、「環境コア」を二つに分類してひとつは各戸設備、もうひとつは共用設備のための空間とするなど、提案者のしたたかな一面が窺える。よく見れば見るほど新たな発見のある作品である。太陽エネルギーの有効利用を実現すると共に、サステナビリティにも配慮した次世代の集合住宅の秀作である。