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審査講評

審査委員長

 

審査委員長 小玉祐一郎〔神戸芸術工科大学教授〕

 

〔審査総評〕
 太陽をはじめとする自然エネルギー利用は、近未来の持続可能な社会の構築に向けていよいよ焦眉の課題となってきた。エネルギーの世紀とも呼ばれる20世紀に、あまりにも多くをエネルギーの力に依存し、恩恵を受けてきた私たちは、どの用途にどのような種類のエネルギーを選び、使うべきか再考を迫られている。建築の分野では、建物の性能を向上させて、エネルギーへの依存を減らすデザインの重要性が強く認識されるようになってきた。

 このコンペの目的は、住宅のエネルギー消費の大きな割合を占める給湯に太陽熱を使うことを前提に、そのための設備を考えることを通じて、建物の外皮のデザインを変え、さらには建物自体のデザインを変えることも見据え、持続可能な社会の住宅を提案することである。振り返ってみれば、私たちはエネルギーに頼った設備の便利さに固執するあまり、住まいの身近な外部空間であるテラスやバルコニーにさまざまな機械を無造作においてきた。環境との共生というならば、まず内と外をつなぐ建物外皮や空間のデザインを再考し、さらには、それを活用するライフスタイルにも思いを巡らす必要がある。このような主催者側の期待に応えるように、1回目のコンペであるにもかかわらず、バラエティに富んだ74点の提案が寄せられた。

 戸建て住宅部門の優秀賞では、自然エネルギーのアクティブ的な創出(太陽熱集熱パネルや太陽電池)とパッシブ的な空間活用の両立を「二合院」という名称に込め、分棟型の住宅が構想されている。二棟の間につくられた路地のような外部空間も魅力的である。優秀賞は対照的に、大屋根で空間を覆い、装置化された屋根の下に、内外をつなぐ中間領域を巧みに設けた案である。ほかにも、共生型ライフスタイルにハイテクを生かす構想が多く見られた。

 集合住宅部門では、集合であることの利点を生かす為、ファサードエンジニアリング的な発想が多かった。最優秀賞は、多くの外部空間を取り込んだポーラスな構成によって住戸と自然との接点を増やし、日よけと太陽熱集熱パネルを一体化した装置を南側のファサードに組み込んでいる。季節や時間によってのモードを切り替え、内外をつなぐ中間領域を豊かにする提案だ。佳作にも同じコンセプトのすぐれた提案があった。優秀賞は、太陽熱集熱パネルを装置化した、プロダクトデザイン的発想の提案だ。シンプルであるが故に汎用性のある計画の提案が評価された。


Solar Terrace House(集合住宅部門 最優秀賞)作品全体を見る

 

 ソラモの特徴の一つは、戸別に設置できる分散型システムであることだ。この案ではその特徴を生かしながら、各住戸に魅力的な屋外スペースを生み出し、一方でダイナミックなファサードを形成することに成功している。南側のテラス上部には、可動式の日よけ装置を一体化した給湯用集熱パネルを設け、時間や季節の変化に合わせて、集熱パネル下面からスライドする日よけルーバーを出し入れし、日射を取り入れたり、遮断したりすることができる。ルーバーは、テラスだけではなく室内の日射もやわらかにコントロールもできる。それが、ファサードに奥行きを与え、視覚的な変化や多様さをもたらしている。各住戸は開放的な南側のパブリックゾーンとやや閉鎖的な北側のプライベートゾーンにわけられ、北側にもテラスが設けられている。全体に外壁面積の多いポーラスな空間構成にして、住戸内を開放的にすると同時に、外部には外の環境に開かれた専有・共有の空間を配置し、内外の接点を数多く創りだすという強い意図がうかがわれる。これらは、アウトドアリビングの魅力を引き出す有効な方法で、温暖地の集合住宅計画の重要なポイントだ。建物をセットバックさせ道路側の圧迫感を解消したこととあわせて、地域に溶け込み、親しみやすい景観を生むことにも貢献している。ソラモとファサードのインテグレーションとそれがもたらす空間の活性化はこのコンペの大きな課題であるが、それに対する積極的な提案として評価できる。

審査委員

 

審査委員 秋元孝之〔芝浦工業大学教授〕

 

ECOFRAME(集合住宅部門 優秀賞)作品全体を見る

 

 オリジナルのSOLAMOの集熱パネルは、集合住宅の各戸バルコニーの手すりと一体化した垂直に設置して太陽熱を集め、給湯に利用するというものであった。この形態はそもそも現在の一般的な集合住宅のスタイルを変えずに、「太陽熱利用技術を野暮なデザインにならないように組み込む」という命題に応えたものである。それに対して本提案では、「集合住宅ならでは」の解法を論理的に示してくれている。
 再生可能エネルギー利用システムを採用する際には、システムの設備容量ではなく、実稼動可能な時間軸を考慮した設備利用率を念頭に計画することが大事だ。太陽光発電や太陽熱利用のシステムは、十分な太陽エネルギーを捕捉することができる天候や時間帯に限って本来の性能を発揮することが出来る。併せてバッファとしての蓄電池や蓄熱層といった器(ストレージ)が有効となる。集まって住まう住宅群では、「各戸で融通する」というルールを適用することが出来れば、過大なストレージは必要ない。この住棟セントラルのアイデアの根幹を為す「エコフレーム」を住戸間に配した計画は、メンテナンスを容易にするなど長期間にわたっての運用にも適している。

 すべての設備を共用にするのではなく、「環境コア」を二つに分類してひとつは各戸設備、もうひとつは共用設備のための空間とするなど、提案者のしたたかな一面が窺える。よく見れば見るほど新たな発見のある作品である。太陽エネルギーの有効利用を実現すると共に、サステナビリティにも配慮した次世代の集合住宅の秀作である。

審査委員

 

審査委員 小泉雅生〔建築家・首都大学東京教授〕

 

空の気分をうつすイエ(戸建住宅部門 優秀賞)

作品全体を見る

 

 太陽エネルギーを効率よく利用するには、周囲の建物や樹木の影響を受けにくい屋根面が有効である。だからSOLAMOの設置位置として、まず屋根がクローズアップされることとなる。この提案は、居住域の上部に大きな屋根を架け渡し、そこで集光や集熱、集水を行っていくというものである。足下近くまで葺き下ろされた屋根の形が特徴的であり、さらに屋根面全体に窓やSOLAMOが展開し、魅力的な建物の表情がつくり出されている。SOLAMOの設置位置としてはオーソドックスだが、 SOLAMO単体だけでなく窓と組み合わせることによって、軽快な外観とすることに成功している。また、機器効率という観点からも、屋根を途中で折り曲げ、夏季の集熱と冬季の集熱とに対応できるように配慮し、かつ集熱上不利な冬季に対応した屋根面積を大きく確保するなど、設備機器側の理屈にもきちんと対応している。SOLAMOを通じて屋根のあり方を考える、という強いメッセージ性をもった提案といえよう。単に設備機器を配するだけでなく、そこから導き出される諸条件を活かし、建築表現へと高めていこうという意図が読み取られる。

 一方、せっかくの特徴的な屋根形状が、内部空間や内部環境に十分に活かされていないように感じられた。大屋根の下の大らかな空間を感じられる視点を設けたり、天井の高さを活かして光を採り入れたり空気の流れをつくり出したり、といった形で、大きな屋根をさらに発展させられたのではないか。SOLAMOを載せる屋根がつくり出すさまざまな可能性が感じられただけに、惜しまれた。

審査委員

 

審査委員 高間三郎〔株式会社 科学応用冷暖研究所所長〕

 

二合院住居 (戸建住宅部門 最優秀賞)

作品全体を見る

 

 ちょうど審査日の翌日に起こった震災でエネルギーを取り巻く環境も大きく変わり非常時の対応を含めて現在参加しているプロジェクトでも再検討しようということが多い。ところで金谷案に関して言えばこうした影響を受けた今さらにそのデザインの意味が増したように思える。この案の特徴は単にソーラーエネルギーのエンジニアリングを導入しただけでなく二合院住居というソーラーエネルギーを軸としたライフスタイルを提案していることにある。技術的には南側の居住スペースをパッシブソーラー北側の団らんスペースをアクテイブソーラー(Solamo)で環境制御するシステムになっている。南側のリビング、子ども部屋や主寝室の各部屋はダイレクトゲインシステムで冬期の日射はコンクリート床や潜熱蓄熱材で蓄熱制御している。夏の日射はファサードシステムのルーバーで遮蔽し比較的奥行きの少ない部屋をクロスベンチレーションで良好な室内環境を維持している。やや気になるのはSolamoを使ったコンペのせいもあるが北側棟のソーラーパネル集熱面積から得れるエネルギーに比べて暖房、給湯など消費量が大きすぎるように見えることで、これは応募案に共通している。ただそうした点を差し引いた上でも単なるシステム提示でなく自然エネルギーと生活を結びつけた試みはこれからの住宅設計の一つの方向性を示している。二合院の発想には江戸の庶民が洒落と風流で四季を過ごしたようにエネルギーを消費して均一な環境を得るのではなくあえて不均一な環境をライフスタイルで楽しむ心の余裕が感じられる。これからはエネルギー制約によっていろいろな意味で人間の生活そのものが変化するだろう。ただそれを受け身の我慢でなくて自然エネルギーを味方にして楽しく暮らすことこそ長い目でみて地球環境にもよいのではと思う。このことをコンペ案としてわれわれに見せてくれた金谷案は最も優れた提案だと思う。

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