所在地 | 福岡県 久留米市 |
新築/既存 | 既存(1969年竣工) |
建物構造 | 地上4階 RC造 |
延床面積 | 4,096㎡ |
竣工年月 | 2022年1月 |
ガス設備 | GHP |
ZEB化の取組み
①改修によるZEBの実現
- 築50年以上経過した庁舎をZEB化改修してZEB Readyを実現
- 窓の断熱化や高効率な空調設備への更新等により大幅な省エネを達成
②レジリエンス強化
- 窓枠再利用したLow-E複層ガラスによる断熱性能向上と全熱交換器等を採用により大幅に空調負荷を低減。さらに高効率空調へ更新し大幅な省エネを実現
③部局間連携による実現
- 上下水道部と環境部・都市建設部が連携してZEB化を推進
主な導入設備
外皮断熱 | Low-E複層ガラス(真空層) |
空調 | GHP |
換気 | 全熱交換器 |
照明 | LED照明 |
給湯 | 潜熱回収型給湯器 |
再エネ | 太陽光発電 |
蓄電池 | リチウムイオン蓄電池 |
主要ガス設備
本建物では高効率GHPを採用。建物の断熱性能を向上させて空調容量をダウンサイジングすることで、大幅な省エネと省電力化を実現。これにより既存の非常用発電機で、停電時に空調設備を稼働させることが可能となった。
設備容量 | 合計257kW (45、56、71、85kWを各1台設置) |
高効率GHP
その他の導入設備
Low-E複層ガラス(真空層)
通常の単層ガラスと比較して、約3倍、熱や冷気を通しにくいガラス。建物の断熱性能が大幅に向上。既存窓枠の流用により、通常業務を行いながら改修が可能。
全熱交換換気扇
換気の際に排出される、涼しい・暖かい室内の熱を回収し、空調負荷を大幅に低減
LED照明
照度センサー導入
消費電力量は同仕様の建物に対して約65%減
太陽光発電設備
発電容量:39.2kW
実績発電量:約43,000kWh/年
蓄電池
蓄電容量:89.2kWh
蓄電池の導入により停電時においても、災害拠点施設として機能を発揮
(参考) ZEBリーディング・オーナー導入計画はこちら
https://sii.or.jp/file/zeb_leading_owner/ZEB2020L-00007-G_01.pdf
出典:SIIウェブサイト
システム全体図
出典:備前グリーンエネルギー株式会社
ZEB化の経緯・きっかけ
久留米市は2021年に「ゼロカーボンシティ」を表明し、2050年までにCO₂排出量実質ゼロを目指している。達成には市有施設からの大幅なCO₂排出量削減が必要であり、特に既存建築物への対策が課題であった。一方で財政面での制約もあり、これらを両立させるため、2018年度より既存建築物のZEB化の検討を開始した。
当初、多くのZEBプランナーから「既存建築物のZEB化は多大な費用がかかる」「解体して新築する方がいい」といった意見があったが、粘り強く研究を行ったところ、ZEB改修事例を見つけ、設計の工夫次第で現行技術の組合せによるZEB化は可能であると判断した。
ZEB化方針を決めた際、”ZEB=電化”の先入観があったが、使用中のガス空調から電気式に変えると、電力デマンド上昇により電気料金の基本料金が上昇することや、既存ガス管等を有効活用できないといった悩みがあった。しかしZEBプランナーである備前グリーンエネルギーに問合せたところ、「ガスでも可能です」と言われ、久留米市としても「災害に強いエネルギーの多重化が可能になる」と考え、さらに「キュービクルの増設も不要となる」ため、省電力なガスシステムを採用するZEB化改修の検討が一気に加速し、実現に至った。
スケジュール
2019年度 | ZEB化可能性調査 |
2020年度 | 実施設計、補助申請 |
2021年度 | 2022年1月竣工 |
ZEB化の成功要因
久留米市は、老朽化した空調設備の更新を機に、高効率化と建物の断熱化を同時に行うZEB化改修を実施している。既に3件でZEB化が完成済み、さらに5件で実施予定である(2022年11月時点)。
ZEB化の成功要因は、環境部と都市建設部の組織横断型チームが施設管理部局と連携しながら対応していることが大きい。厳しい財政事情の中でも必要な空調設備更新を行いつつ、脱炭素化、強じん化の取り組みを加速させるZEB化に「ZEBチーム」が一丸となって取り組んでいる。
▲写真左から、上下水道部・林さん、篠原さん、川野さん、環境部・境さん、山部さん