建物概要
所在地高知県
新築/既存新築
建物構造地上8階 SRC/一部S/免振
延床面積32,849㎡
竣工年月2019年4月
ガス設備コージェネ、吸収冷温水機
ZEB化の概要

ZEB化の取組み

①省エネ性と経済性を両立させた大規模病院

  • 400床を超える大規模病院ながら、機能を維持しつつコンパクトな造りにすることで環境負荷低減と建設コスト抑制
  • エネルギーサービスを活用して設備の設計・所有からメンテナンス・省エネサポートまでを事業者に委託し、ライフサイクルコストを低減

②コージェネのメリットを最大限活用

  • 10台のマイクロコージェネ導入によりBEIを低減しZEB Readyを実現
  • 電力ピーク時にはコージェネの活用により電力デマンドを抑え、光熱費を大幅削減

③エネルギーの多重化

  • 中圧ガスと重油を用いて、災害拠点病院としての機能維持

主な導入設備 (下線部は既存仕様を流用)

外皮断熱外壁:発泡ウレタン吹付
床面:硬質スタイロフォーム
空調吸収冷温水機
空冷ヒートポンプチラー、EHP
換気インバーターファン、連動制御
(温度、CO2、人感)
照明LED照明(在室検知制御、昼光制御、
タイムスケジュール制御等)
給湯ヒートポンプ給湯器
効率化設備コージェネ
その他BEMS

主要ガス設備

  • ZEB Readyの達成に向けて、マイクロコージェネを10台採用。BEIの低減に寄与し、建物全体の約8%の省エネに貢献
  • コージェネの排熱は給湯(厨房・シャワー室など)や暖房、再熱除湿に活用
  • ピーク時にガス機器を稼動し電力デマンドの低減に貢献
  • コージェネの排熱を給湯等に利用することで冬季の電気式給湯器の稼働を抑え、吸収冷温水機は夏季の電気空調の稼働を抑制
設備容量コージェネ350kW(35kW×10台)
吸収冷温水機1,266kW(633kW×2台)


電力デマンド削減イメージ



マイクロコージェネ



吸収冷温水機


その他の導入設備


Low-Eガラスを採用。病棟をコンパクトにすることで外皮面積を縮小。南側を全面開口にして患者と職員の快適性を維持


照明

照明はLED照明を採用し、そのほとんどが人感センサーや調光センサー付き。人の有無や時間帯によって照度を落すなどして消費電力を抑制


空調

空冷ヒートポンプチラー(765kW)を設置。吸収冷温水機と合わせた最適運用により、電力デマンドを抑え光熱費を大幅に削減


エネルギーサービスとは

高知赤十字病院様ではエネルギーサービス事業を導入。エネルギーサービス事業は建物オーナーや施設運営者に替わりエネルギーサービス事業者が設備の設計、所有、メンテナンス、省エネサポート等を行うサービス。
※エネルギーの調達も合わせて熱源設備に関する契約を一本化するエネルギー・サービス・プロバイダー(ESP)事業もある。


<エネルギーサービスの例>
①最適システム設計
 熱源設備・省エネ設備・電力設備等、物件に合わせた最適なプランを提案
②設備投資・所有
 エネルギーサービス事業者が設備投資を行うことで、補助金活用やイニシャルコストの平準化を実現
③運転保守
 設備の運転状況を監視し、万が一の故障・不具合発生時には迅速に対応
④最適運用支援
 設備導入後、エネルギーのデータを計測・収集し、継続的な最適運用を支援
⑤エネルギー調達 ※ESP事業のみ


災害時の対応について

災害拠点病院としての機能を維持するため、停電時には非常用発電機を活用し電力の使用箇所を切り替えながら必要箇所へ電力供給を行う。さらに、停電時だけでなく、万が一のガスの途絶時にも空調を活用できるよう、エネルギーを多重化し、直だきの吸収冷温水機はガス・油切替型となっている。また、浸水対策として水害時にも病院機能を維持する構造を採用。


ホール
 

災害時には対策本部として機能


吸収冷温水機
オイルサービスタンク

吸収冷温水機はガス・油切替型となっており、停電時だけでなく万が一のガス途絶時にも対応可能


非常用発電機

停電時にも建物全体で約4日分の電力を確保。状況に応じて電力使用箇所を切替え、さらに長期間に渡って効率的に電力を使用


井水

井水浄化設備を設け、災害時には飲料水や透析用水として井水を活用


エネルギーシステム図


ZEB化の経緯・ご担当者のコメント

ZEB化の経緯・きっかけ

  • 高知赤十字病院管財課 山﨑栄崇施設管理係長
  • 検討を始めた2015年当時、病院の老朽化により建て替えを余儀なくされていた反面、新築移転には多大な投資が必要だった。
  • 新病棟の設備プロポーザルでエネルギーサービスとZEB Ready認定取得を提案した事業者を選定したことがきっかけ。
  • 総事業費を抑えながら省エネを実現するために設計変更を度々行わなければならず、困難を極めたが、病院、設計事務所、エネルギーサービス事業者の3社で連携しながら実現することができた。
  • ZEB認証取得のためにBEIを低減する必要があったが、10台のコージェネを導入することでZEB Readyを実現することができた。

スケジュール

2015年4月旧病棟の新築・移転の計画が開始
2016年7月~
2019年4月
設計・施工期間
2019年5月開院

竣工後の取組

  • 高知赤十字病院管財課 山﨑栄崇施設管理係長
  • 稼働以来、エネルギーサービス事業者から送ってもらうエネルギーデータを元に、省エネ推進会議を開催し、職員らに対して啓発活動を行ってきたことが奏功し、非常に大きな省エネのメリットを享受している。
  • 3万㎡強の延床面積で400床を超えるコンパクトなつくりではあるが、省エネに向けた課題、設備運用における変更点や職員の動線の注意点等について繰り返し丁寧に周知をしてきたことにより、当初の温度調節以外に竣工から3年経過した今まで患者、職員からは大きな不満なく過ごしていただいている。
  • 竣工後3年目になるが、現在でも省エネ委員会にて患者さん、スタッフからの意見を集め、改善検討を行っている。当初は課題もあったが、かなり改善してきており、スタッフの理解も得られている。コミュニケーションをとることで大幅な省エネが実現している。

ZEB化の検証

  • 竣工時には一次エネルギー消費量は51.5%削減の計画だったが、2020年度実績では69.5%削減となり、計画値を大きく上回る省エネを実現。(コンセント等含まず。)
  • 特に、空調の省エネ効果(-23.9%)、コージェネによる省エネ効果(-14.2%)が大きく貢献。


ZEB化による効果

  • 高知赤十字病院管財課 山﨑栄崇施設管理係長
  • コージェネは、省エネに貢献するだけでなく、電力デマンドの低減に大きく寄与しており、必要不可欠と考えている。
  • コージェネを含めた省エネや電力デマンド低減によって年間数千万円の光熱費の削減ができている。
  • なお、南側に全面開口部を設け眺望を確保するなど、ZEBを目指す中でも患者、職員の快適性を維持することを最大限優先した結果、2021年には医療福祉建築賞を受賞することができた。

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