所在地 | 千葉県袖ケ浦市 |
新築/既存 | 新築+既存改修 |
建物構造 | 中庁舎(改修) : 地上7階地下1階塔屋2階 北庁舎(新築) : 地上5階南庁舎(新築) : 地上2階 設備棟(新築) : 地上2階 |
延床面積 | 中庁舎(改修) : 6469.28㎡北庁舎(新築) : 4982.74㎡ 南庁舎(新築) : 1405.99㎡設備棟(新築) : 1039.43㎡ |
竣工年月 | 2024年度内 予定 |
ガス設備 | コージェネ、吸収冷温水機、 排熱投入型吸収冷温水機 |
ZEB化の取組み
①長年親しまれた既存庁舎の改修と新築を組み合わせたZEB
- 40年以上にわたり地域の風景であり続けた既存庁舎の持つ特徴を新築部にも引用することで調和のとれた市庁舎として再生
- 開かれた庁舎を象徴する北庁舎5階の展望ロビー・回廊は、Low-E複層ガラスにより省エネ性と眺望を両立
- 新築部分だけでなく既存の中庁舎も断熱性能の向上により省エネ性・快適性が向上
②防災拠点としてレジリエンス強化
- 耐震性の高い中圧ガスを引き込み、コージェネに使用。非常用発電機と併せて地震直後から事務事業継続が可能
- 防災の拠点となる新築部の北庁舎では免震構造を採用し、耐震性能を確保
③カーボンニュートラルへの取組み
- 既存建築を活用しエンボディドカーボンの削減に寄与
- カーボンニュートラル都市ガスを採用し、地球規模でのカーボンニュートラル化に貢献
主な導入設備
外皮断熱 | 押出ポリスチレンフォーム Low-E複層ガラス |
空調 | 吸収冷温水機、排熱投入型吸収冷温水機、EHP、二次ポンプ変流量制御、大温度差送水システム、空調機変風量制御、全熱交換器 |
換気 | CO₂濃度による外気量制御 |
照明 | LED照明、在室検知、明るさ検知、タイムスケジュール制御、初期照度制御 |
給湯 | ガス給湯器、電気温水器 |
再エネ | 太陽光発電設備 |
その他 | 蓄電池 |
主要ガス設備
- コージェネ
- コージェネレーションシステムは、排熱利用が可能な夏季・冬季は日常的に使用することを想定。電力のピークカットを行い契約電力の低減に貢献。
- 停電時自立型を採用しており、停電時にもガスの供給が継続している限り電力供給が可能。
- 排熱を利用し冷房・暖房を行うことで、大幅な省エネに貢献。
- 吸収冷温水機・排熱投入型吸収冷温水機
- 夏季は、排熱投入型吸収冷温水機を優先して運転。
- 排熱投入型吸収冷温水機は、冷房では排熱のみで運転可能な領域が広い機種を選定し、排熱を無駄なく利用。
- 冷却水大温度差、冷温水大温度差とすることで搬送動力の低減を行う。
- 日々の運転管理により省エネ効果を最大化。
- 中圧引き込み
- 耐震性の高い中圧ガスによって敷地内にガスを引き込み、専用ガバナを活用し敷地内で低圧に減圧。
設備容量 | コージェネレーションシステム35kW 2台 吸収冷温水機280kW 排熱投入型吸収冷温水機280kW |
コージェネ 災害時にも電力供給可能な停電時自立型を採用。写真(右)は停電時にも優先的に使用可能なコンセント
吸収冷温水機(奥)
排熱投入型吸収冷温水機(手前)
設備棟 浸水対策のため1階を駐車場等とし、受変電設備、非常用発電機、給水設備など主要設備は2階に設置
中圧ガス 専用ガバナ 浸水対策のため嵩上げを実施
その他の導入設備
太陽光発電※
太陽光のエネルギーを、太陽光パネルによって電気に変換して発電するシステム。電気料金の削減や災害時の電力確保に有効。
蓄電池※
太陽光発電による電力を有効活用するため、蓄電池を設置。災害時にも電力供給予定。
T-Zone Saver®照明制御 /
人検知連動一灯制御
人の在・不在に応じて、照明を一灯単位で点灯・減灯し省エネルギー化を図る。
電気空調設備
執務室等では高効率電気空調を採用。ガス空調と併用することでエネルギーを多重化。
※:竣工前の為写真はイメージです
長年親しまれた既存庁舎の改修と新築を組み合わせたZEB
地域を受け入れる
ゲートとしての南庁舎
市民交流スペース
- 市民に開かれた庁舎として、南庁舎を市民協働ゾーンとして整備。
- 日射の程よい遮蔽と同時に地域のプライバシーに配慮した計画。
原風景としての
中庁舎
既存庁舎の面影が感じられる市民窓口
- 既存庁舎の特徴を生かし調和のとれた市庁舎として再生。
- 既存の低層部のスラブを北庁舎・南庁舎に拡張し一体感を創出。
- 窓をLow-E複層ガラスに交換、屋根には断熱材(押出ポリスチレンフォーム)を敷設することで外部から侵入する熱を抑制。
開かれた庁舎を
サポートする北庁舎
富士山や東京湾が一望できる展望ロビー
- 市民からの意見を踏まえて設置した展望ロビーはLow-E複層ガラスにより省エネ性と眺望を両立。
- 外装のメンテナンス性、日射遮蔽機能をもたせた水平庇を設置。
- 「災害応急対策活動に必要な施設」として優れた耐震性能を有する免震構造を採用。3階に災害対策諸室を配置。
カーボンニュートラル化に向けた取組み
袖ケ浦市庁舎では、パッシブ技術として高遮熱Low-E複層ガラス、日射遮蔽(庇)や断熱材として押出ポリスチレンフォーム等を導入し必要なエネルギーを低減。更にアクティブ技術として高効率空調や高度な制御を実装したLED照明等により効率的な運用を行っている。それらの省エネ技術により単位面積当たりの一次エネルギー消費量は50.6%の削減を計画している。加えて、太陽光発電やコージェネを活用した創エネ技術により3.4%削減し、合計54%の一次エネルギー消費量の削減を計画。更なる取り組みとして、残った供給エネルギーのカーボンニュートラル化を目指し、袖ケ浦市庁舎ではカーボンニュートラル都市ガスを採用。燃焼させても地球規模での温室効果ガス削減に貢献。
カーボンニュートラル都市ガス 都市ガスの主原料であるLNG(液化天然ガス)の採掘から燃焼に至るまでの工程で発生する温室効果ガスを、新興国等における環境保全プロジェクトにより創出されたCO₂クレジットで相殺したLNGを活用した都市ガス。燃焼させても地球規模ではCO₂等が発生していないとみなされる。環境保全プロジェクトにおけるCO₂削減効果は第三者の認証機関がCO₂クレジットとして認証し発行。
ZEB化の経緯・きっかけ
旧庁舎、既存棟ともに昭和56年の建築基準法改正以前に建設されたものであり、現行基準の耐震性能を満たしておらず、老朽化も進行していた。
平成23年3月の東日本大震災を契機として、市民の安全・安心の確保のため防災拠点となる庁舎機能の整備を計画的に進めるための「庁舎整備基本計画」を平成24年度に策定。平成26-27年度には既存棟の耐震補強設計、平成28-29年度には市民、議会、職員等の意見を参考に「庁舎整備基本設計」をまとめた。
平成30年度は庁舎の品質や機能の向上及びコスト縮減に向けて最適な整備手法の検討を行い、設計や施工等、事業プロセスの対象範囲に応じて民間のノウハウ等を活用する手法である設計・施工一括発注方式(デザインビルド方式)を採用することとした。
令和元年度は高度な技術力等、総合的なノウハウとともに安定的な業務遂行能力を有する受注者を選定するため、公募型プロポーザルにより、大成建設株式会社千葉支店を優先交渉権者として決定し、令和元年12月に本契約を締結した。
スケジュール
平成25年 3月 | 庁舎整備基本計画策定 |
平成30年 3月 | 庁舎整備基本設計策定 |
令和元年12月 | 庁舎整備工事契約締結 |
令和 3年 5月 | 工事開始 |
令和 4年 7月 | 北庁舎・設備棟 新築竣工 |
令和 5年 6月 | 既存棟(中庁舎) 改修竣工 |
令和 6年度内 | 南庁舎 新築竣工 |
ZEB化の成功要因
- 袖ケ浦市 財政部資産管理課 徳田嘉寛参事
プロポーザルにおける要求水準書では「環境にやさしい庁舎」を整備方針とする中で、事業者よりZEB認証取得の提案があった。当初は新築の北庁舎のみをZEB Ready化するという提案であったが、実施設計において協議を進める中で、受注金額の範囲内でZEB化を検討していくこととし、改修する既存棟(中庁舎)を含む、庁舎全体にてZEB Ready認証を取得した。将来的な更新費用やランニングコストを抑えるために一般的な機器を選定し、汎用的な技術の組み合わせにより費用対効果の高いZEB化になったと感じる。
庁舎の竣工前だが、すでに竣工した北庁舎と中庁舎の改修だけでもガスと電気の大幅な低減を実感している。契約電力における低減も含め、光熱費の大幅な削減が期待できる。
さらに、建物の断熱性が高まったことで外気の影響を受けにくく空調の効き目など、如実に室内環境が向上した。これからも民間のノウハウを活用しながら市内施設の環境負荷低減に取り組みたい。
▲写真左から袖ケ浦市 徳田さん、萩野さん、笹原さん
ZEB計画における既存活用の経緯と意義
- 大成建設株式会社 吉田典彦 ZEB推進室長
北庁舎をZEB Readyで設計することは応募時から考えていました。実施設計をすすめるうち、既存改修を行う中庁舎も、北庁舎の省エネ性能と室内環境と同程度としたいと考えるようになりました。中庁舎は内装を解体して耐震補強を行うことが計画されており、窓と外壁の高断熱化工事が実施しやすい好条件でした。北庁舎と同じ窓仕様とすることで空調熱負荷も低減させ、結果として庁舎全体でのZEB Readyが実現できました。工事費全体での増額を抑えることもできたのもよかったと思います。
既存建築物のZEB化は、解体して新築する際のCO₂を発生させないことからエンボディドカーボンの削減となるほか、一般的な設備改修より踏み込んだ省エネになることからオペレーショナルカーボンの継続的な削減に貢献します。建築物の形状や開口部が決まっていることや空調熱源方式の選択肢が限られる場合がある点が新築とは違いますが、高効率空調設備、LED照明器具と照明制御を採用し、可能ならば窓や壁の断熱化も図ることでZEB Readyを達成できる可能性があります。長く大切に使いたい既存建築物でリニューアルZEBに取り組めば、室内の快適性向上と継続的な脱炭素効果の両方が得られるところに意義があると思います。