所在地 | 東京都葛飾区 |
新築/既存 | 新築 |
建物構造 | 地上3階 RC造一部S造 |
延床面積 | 7,985.46㎡ |
竣工年月 | 2025年1月 予定 |
ガス設備 | GHP、ガス給湯器 |
ZEB化の取組み
①葛飾区立学校初のZEB化
- 『ゼロエミッションかつしか』を踏まえた区内横断プロジェクト。継続的な学校改築時のZEB化に向けた先進事例として「ZEB Oriented相当※1」を実現。
※1:ZEB Orientedの認証は面積10,000㎡以上の建物が対象であり、条件に達していないため「相当」と記載。
②地域に求められる防災性能を兼ね備えたZEB
- 葛飾区では体育館のみならず普通教室でも災害時に空調が使えることを定めており、停電対応型のGHPを多数導入。
③実際に使う人(先生、児童)に着目した省エネ
- 「適応能」を開放し、発汗を促進し採涼・採暖を楽しむ空調でBEI低減を実現。
- 使用実態に合わせた最適容量の空調で、省エネと働きやすい環境づくりを実現。
主な導入設備
外皮断熱 | 外壁:硬質ウレタンフォームA種1H:150mm 屋根:押出法ポリスチレンフォーム3種b:100㎜ Low-E複層ガラス、庇、バルコニー |
空調 | GHP(停電対応型含む)、EHP |
換気 | 全熱交換器 |
照明 | LED照明 |
給湯 | ガス給湯器 |
再エネ | 太陽光発電 4kW |
その他 | ドライミスト、冷媒式放射パネル、緑のカーテン、土壁、雨水ろ過、光庭、BEMS |
主要ガス設備
- 停電対応型GHP
災害等による停電時でも都市ガスが供給されているかぎり自立運転・電力供給を継続し、停電発生時には自立運転スイッチを切り替えるだけで空調のほか、予め設定されたコンセントや照明などが使用可能となる。水元小では、避難所となる体育館だけでなく、一部の普通教室にも停電対応型GHPを採用し、多様な避難者の受け入れを想定している。 - 潜熱回収型給湯器
従来機では捨てていた排ガスからエネルギーを回収。排ガス温度を約200℃から約80℃に下げることによる熱回収と同時に、排ガス中に含まれている水蒸気を水に戻す潜熱回収により、熱効率93%~95% (HHV) の高効率を実現。
設備容量 | GHP:合計657.4kW、12台、12系統 (うち、停電対応 224kW、4台、4系統) 潜熱回収型給湯器:合計441.1kW、11台 |
停電対応型GHP※2
潜熱回収型給湯器※2
※2:竣工前の為写真はイメージです
その他の導入設備
太陽光発電※2
太陽光のエネルギーを、太陽光パネルによって電気に変換して発電するシステム。電気料金の削減や災害時の電力確保に有効。
蓄電池※2
太陽光発電設備の設置面の形状および設備機器のメンテナンスを考慮して12kWhの蓄電池を設置予定。
ドライミスト※2
屋外と空調の効いた室内との急激な温度差を緩和するため、昇降口の気温を下げるドライミストを採用。子どもを纏う熱膜を取り除くことで空調温度設定の緩和につなげる。
電気空調設備※2
職員室などの管理諸室にはEHPを導入。太陽光発電、非常用のディーゼル発電機も併せて活用し、エネルギー供給の多重化によりリスクの分散を図る。
※2:竣工前の為写真はイメージです
適応能を引き出す環境設計
校庭から教室にたどり着くまでに温度や湿度が段階的にならされていき、過剰な冷房をしなくても体感温度で適温に感じられるように、体が適応するための助走空間を設計。人間に本来備わっている外部環境の変化に身体が適用しようとする力である「適応能」を高めて子どもの健康と省エネルギーを両立。
ZEB化の経緯・きっかけ
葛飾区は『ゼロエミッションかつしか』を2020年に表明。当時すでに建て替え計画が挙がっていた水元小を題材にZEBの検討が開始。
営繕課・教育総務課・環境課・政策企画課・設計事務所である類設計室等といった関係者横断で勉強会を実施し、水元小ではZEB Oriented相当の実現を目指すこととなった。
今後も控えている小中学校の建て替え・改築計画でもZEBを目指すこととなっており、先行事例として知見を蓄積させる。
スケジュール
2019年4月~ 2019年11月 | 改築基本構想・基本計画 |
2020年6月~ 2022年3月 | 基本・実施設計 |
2021年3月~ 2021年12月 | 実施設計 |
2023年7月~ 2025年1月 | 本体工事 |
2025年4月 | 新校舎での学校運営開始(予定) |
2026年4月 | 事業完了予定 |
ZEB化の成功要因
- 葛飾区 施設部営繕課 青柳 拓哉氏
子どもの健康に配慮し、断熱・木質化で温度の不均一性をなくす、発汗を促す、採涼・採暖を楽しむ、など体感温度に寄り添った計画としている。適正な空調設定温度を追求し、空調機の能力を低減した。
ZEBは設備導入だけでなく運用も重要なため、区と学校との意見交換や、設計・運用一体となったワークショップを開催。学校における空調の運用実態、会議の規模・頻度なども考慮して施設の使用実態に合った省エネ対策を行い、先生方が働きやすい環境づくりを心掛けた。児童や先生など実際に使う人に着目して省エネ対策を施したことがZEB化につながった。
そのほか、高効率空調機、全熱交換器、LED照明等の採用、建物の外皮性能、断熱性を向上することによって、空調負荷を抑えられるような省エネの検討も行い、結果としてZEB Oriented相当を実現できた。
今後の取り組みについて
- 葛飾区 施設部営繕課 作村 和規係長
葛飾区には、小中学校が70程度あり、順次建て替え計画を実施している。水元小でのZEBの検討を契機として、葛飾区で年間2校程度実施している改築計画では、例外もあるがZEB Ready相当が条件となっており、計画中の物件ではほとんどがZEB Ready実現見込みとなっている。学校施設ということもあり、レジリエンス強化と省エネの両立も必要なことから、避難所となる体育館では基本的に停電対応型のガス空調を採用し、少なくとも三日以上滞在できるよう想定している。また、地域の防災計画では普通教室でも避難者を受け入れるため、水元小では一部の普通教室でも停電対応型GHPを導入する。さらに今後は設備導入時だけでなく、運用段階でのZEB Readyを目指したいと考えており、設計事務所と検証等を行っていきたい。
ZEB化による効果(設計値)
▲写真左から、葛飾区 石澤稜太さん、本田良太さん、青柳拓哉さん、福西敦さん