所在地 | 滋賀県守山市 |
新築/既存 | 新築 |
建物構造 | 地上4階 S造 |
延床面積 | 12,990㎡(庇除く) |
竣工年月 | 2023年8月(暫定供用開始) |
ガス設備 | GHP、排熱投入型吸収式冷温水機、 コージェネ |
ZEB化の取組み
①基本設計先行型デザインビルド方式の採用
- 基本設計段階で設計思想を固めつつ、実施設計・施工段階を一括で進めることによりスムーズなZEB化プロジェクトを実現。運用段階でも受注者が検証をサポートし、最適チューニングを実施予定
基本設計者:隈・安井設計共同企業体
実施設計・施工者:(株)竹中工務店
②パッシブ技術とアクティブ技術の組合せ
- Low-E複層ガラスや庇、ルーバー等の採用により外皮の断熱・遮熱性能を向上。高効率空調、コージェネの採用により大幅な省エネ性能を実現
③省エネ性とレジリエンスの両立
- エネルギー種を限定せず、電気、都市ガス(中圧)、LPガスの3種類のエネルギーのベストミックスにより省エネ性に加え、レジリエンス向上に寄与
主な導入設備
外皮断熱 | 外壁:吹付硬質ウレタンフォーム 30㎜ 屋根:ポリスチレンフォーム 35㎜ Low-E複層ガラス 大庇、木調アルミルーバー |
空調 | 都市ガス仕様GHP、LPG仕様GHP、EHP 排熱投入型吸収式冷温水機、空冷チラー、 冷却塔 (インバーター制御、送水温度緩和、 外気処理制御、人感センサー制御) |
換気 | 全熱交換器 |
照明 | LED照明 (タスクアンビエント照明、調光制御、 在室検知制御) |
給湯 | ガス給湯器(LPG) |
再エネ | 太陽光発電 |
効率化設備 | コージェネ |
その他 | BEMS、AI省エネシステム、蓄電池 |
主要ガス設備
- 最新型の高効率GHP
都市ガス仕様GHPを主に利用頻度にバラつきがある議会エリアや会議室等に導入することで、急激なデマンドの上昇を抑制。
LPG仕様GHPは停電対応型を採用。1階の多目的ホールや待合スペース、エントランスに導入し、災害時の地元LPG業者による早期復旧を期待。市民の一時避難も想定している。 - コージェネと排熱投入型吸収式冷温水機の組合せ
外調機の熱源として熱電併給のコージェネと排熱投入型吸収式冷温水機を導入。コージェネ排熱を暖房時は直接利用、冷房時は排熱投入型吸収式冷温水機に投入し冷水製造。 - 耐震性を高める中圧ガスガバナ
都市ガスは地震時でも途絶しにくい中圧ガス引込みを採用。電気の2回線引込み、LPガスの地元事業者供給と合わせてエネルギー供給の冗長性を確保。
設備容量 | GHP合計344.4kW (71kW×2台、45kW×4台、22.4kW) GHP(LPG仕様)合計224kW (56kW×4台) 排熱投入型吸収式冷温水機281kW コージェネ合計70KW (35kW×2台) |
高効率GHP
(手前2基はLPG仕様)
排熱投入型
吸収式冷温水機
コージェネ
中圧ガスガバナ
その他の導入設備
庇・ルーバー
日射遮蔽とデザイン性を兼ね備えた庇・ルーバーを設置。木調のアルミ製を採用し、日射・温度変化・風雨による劣化を抑制。
照明設備
ZEB Readyを目指すため執務エリアは500Lxで統一の上、タスクアンビエント照明を採用。調光制御、在室検知制御を導入し更なる省エネを実施。
太陽光発電設備
発電容量40kWで全て自家消費。将来的に増設できるよう屋上耐荷重を確保済み。
電気空調設備
執務エリア向け個別空調熱源としてEHPを、外調機用セントラル熱源として空冷HPチラーを採用し、電気熱源とガス熱源のベストミックスを実現(電気:ガス(LPガス込)=54%:46%)。
非常時のエネルギー自立を確保したZEB設計の概要
●エネルギー供給のフロー図
(https://www.city.moriyama.lg.jp/shiseijouhou/shinchousha/1002212/1002221.html)一部加工
ZEB化の経緯・きっかけ
東日本大震災や熊本地震を契機に防災への意識が高まり、庁舎整備の構想が持ち上がった。旧庁舎は築58年(1965年竣工)を経過し、老朽化と耐震強度不足が顕在化しており、改修ではなく建替えを選択。
基本計画時に5つの基本方針を策定。その方針の一つに掲げた「環境とみらいの世代に優しい庁舎」を具現化するため、基本設計時にZEB Readyを目指すことを決定した。
スケジュール
2017年11月~ 2019年3月 | 基本計画 |
2019年8月~ 2020年6月 | 基本設計 |
2021年3月~ 2021年12月 | 実施設計 |
2022年1月~ 2023年5月 | 本体工事 |
2023年8月 | 暫定供用開始 |
2025年12月 | 事業完了予定 |
ZEB化の成功要因
- 守山市 総務部 施設整備課
姫野 輝係長・上田 真也係長
検討当初は環境性を謳うもZEB化という具体的な目標は定めていなかったが、基本設計時にZEB Readyとすることを掲げた。一定の指標があることにより、皆が同じ方向に進むことが出来たことで、環境性能の高い建物の実現が図れた。
また、ZEB化やレジリエンス向上によるコスト増加に対して補助金等※を積極活用することで費用圧縮を図った。デザインビルド方式の採用により設計・施工の円滑な連携を図ることができた。
※補助金等:市町村役場機能緊急保全事業債、緊急防災減災事業債、都市構造再編集中支援事業補助金、サステナブル建築物等先導事業補助金、びわこ材利用促進事業補助金、デジタル田園都市国家構想交付金
既に多くの自治体から見学の要望をいただいており、我々の取得したノウハウを社会に還元できればと考えている。
ZEB化に向けた付加価値提案
- 竹中工務店 布上(ほがみ) 亮介
シニアチーフエンジニア
基本設計段階でZEB Ready化の方針は決まっていたが、実際にZEB Readyを達成するためには一工夫必要となった。例えば執務室の照明照度を基本設計の750Lxから500Lxに変更するため、市役所職員に500Lxの執務空間を実際に体験してもらい、タスクアンビエント照明の採用と合わせて照明設備の省エネを実現した。また、空調設計は安全側で過剰容量にならないよう、使用状況を想定して出来るだけ合理化し、空調設備での省エネも図った。
デザインビルド方式では竣工後3年間のエネルギーマネジメントも行う予定であり、これから分析を進めて最適なチューニングを検討、提案していきたい。ゼネコンとして自治体庁舎で実施設計・施工から運用まで関われる案件は少なく、経験を蓄積して他の自治体庁舎へも生かせればと思う。
ZEB化による効果(設計値)
▲写真左から、守山市姫野係⻑、上⽥係⻑、竹中工務店布上シニアチーフエンジニア