建物概要
所在地長崎県長崎市
新築/既存新築
建物構造地上19階地下1階塔屋1階
延床面積51,752.46㎡
竣工年月2022年11月(2023年1月 開庁)
ガス設備コージェネ排熱投入型吸収冷温水機
潜熱回収型ガス給湯器
ZEB化の概要

ZEB化の取組み

①高水準の環境性能を持つ庁舎

  • 南北面の建物ファサードはRCの柱・梁のなかにCLTパネルを設置。炭素の固定化に加え、高い外皮断熱性能と日射遮蔽を実現。設備側では外気導入量の適正化や照明照度の低減、コージェネ導入など、省エネとなる工夫の積み重ねでZEB Readyを達成

②防災拠点としてレジリエンス強化

  • RCの柱・梁フレームとCLTパネルによる構造などにより、超高層ながら防災拠点庁舎としての高い耐震安全性を確保
  • 電力は2回線、都市ガスは中圧ガス供給で引込み。万一の停電の際にもコージェネと非常用発電機(3日間)が稼働することで防災拠点としての機能を維持

③カーボンニュートラルへの取組み

  • CLTパネルは県産材を用い、カーボンストックに貢献
  • 電気は一部再生可能エネルギー由来に、ガスはカーボンニュートラル都市ガスを採用することで、エネルギーのカーボンニュートラルを実現

主な導入設備

外皮断熱

屋根:

押出法ポリスチレンフォーム保温板3種b50mm

外壁:

硬質ウレタンフォーム吹付け50mm
Low-E複層ガラス
⽔平庇(0.6m)
CLTパネル
空調 排熱投入型吸収冷温水機(ジェネリンク)、モジュールチラー、EHP、水蓄熱システム※輻射空調方式+ファンコイルユニット方式、全熱交換器組み込み単一ダクト方式、冷温水・中温冷水による4管方式 ※大温度差送水制御、変流量制御、変風量制御
換気デシカント外調機、全熱交換機、外調機※CO₂制御
照明LED照明※照度センサー制御、人感センサー制御
給湯潜熱回収型ガス給湯器(厨房・シャワー)
電気温水器(トイレ手洗い用)
効率化設備コージェネ(停電対応型)
再エネ太陽光発電
その他BEMS、蓄電池

主要ガス設備

  • コージェネ450kW(停電対応型)
    • コージェネはガスエンジン発電機を採用し、夏期冬期を中心に日常的に使用。
    • 発電時の排熱を、デシカント外調機におけるデシカントロータの再生熱や冷暖房に利用することで省エネに貢献。
    • 電力ピークカットにより契約電力を低減させ、経済性を実現。
    • 停電対応型を採用しており、停電時にもガスの供給が継続している限り電力供給が可能。
    • 停電時は、非常用発電機と同期して、保安負荷等に電力供給。
  • 排熱投入型吸収冷温水機
    • コージェネの排熱を利用した冷房運転が可能。
    • 夏期は、排熱投入型吸収冷温水機を優先して運転。
    • 冷却水系統と冷温水系統に大温度差送水制御、変流量制御を導入することで搬送動力を低減。
  • 中圧引き込み
    • 耐震性の高い中圧ガスによって敷地内にガスを引き込み、熱源機は直接供給、専用ガバナを活用し敷地内で低圧に減圧。
設備容量 コージェネ450kW(停電対応型)×1台
排熱投入型吸収冷温水機528kW×2台
潜熱回収型ガス給湯器
100号×1台24号×1台

コージェネ450kW
(ガスエンジン)

排熱投入型吸収冷温水機

中圧ガス専用ガバナ

潜熱回収型ガス給湯器

コージェネ450kW
(ガスエンジン)

潜熱回収型ガス給湯器

その他の導入設備


天井輻射空調パネル(左)+ デシカント外調機(右)

長時間の執務が見込まれる基準階は、不快な気流を感じにくく快適性に優れる天井輻射空調と、デシカント組込外気処理空調を組合せ。


LED照明

「全館LED照明器具を採用し、照度を最適化(事務室・会議室:500Lx)、人感センサー(トイレ、倉庫)を導入し更なる節電を実現。


高効率EHP(左)高効率モジュールチラー(右)

会議室などの小部屋等ではEHPを採用。
ガス空調と併用した最適運用により、電力デマンドを抑え、光熱費を大幅に削減。


BEMS

エネルギーの見える化、分析により、更なる省エネ運用を実現。


天井輻射空調パネル(左)
+ デシカント外調機(右)

長時間の執務が見込まれる基準階は、不快な気流を感じにくく快適性に優れる天井輻射空調と、デシカント組込外気処理空調を組合せ。


LED照明

「全館LED照明器具を採用し、照度を最適化(事務室・会議室:500Lx)、人感センサー(トイレ、倉庫)を導入し更なる節電を実現。


高効率EHP(左)
高効率モジュールチラー(右)

会議室などの小部屋等ではEHPを採用。
ガス空調と併用した最適運用により、電力デマンドを抑え、光熱費を大幅に削減。


BEMS

エネルギーの見える化、分析により、更なる省エネ運用を実現。

確実に災害時対応ができる庁舎

新庁舎は災害対応拠点として確実に機能するため、建物自体の耐震安全性に加え、万が一インフラが途絶した場合でもインフラ供給のバックアップシステムによって自立運営ができることを目指した。

非常用発電機

重油燃料小出槽

太陽光発電

蓄電池

高水準の環境性能を持つ庁舎

新庁舎では、建築的手法による外皮性能向上や設備的工夫によって、外皮性能BPI(PAL*設計値/PAL*基準値)は0.88、一次エネルギー消費性能BEI(一次エネルギー設計値/一次エネルギー基準値)は0.50、BELS(建築物省エネルギー性能評価)においてZEB Readyを認証取得した。

出典:プロジェクトストーリー 長崎市庁舎 技術編|山下設計ホームページ
https://www.yamashitasekkei.co.jp/project/story/

出典:プロジェクトストーリー 長崎市庁舎 技術編|山下設計ホームページ
https://www.yamashitasekkei.co.jp/project/story/

カーボンニュートラル都市ガス 都市ガスの主原料であるLNG(液化天然ガス)の採掘から燃焼に至るまでの工程で発生する温室効果ガスを、新興国等における環境保全プロジェクトにより創出されたCO₂クレジットで相殺したLNG。燃焼させても地球規模ではCO₂等が発生していないとみなされる。環境保全プロジェクトにおけCO₂削減効果は検証機関がCO₂クレジットとして認証。

ZEB化の経緯・担当者のコメント

ZEB化の経緯・きっかけ

  • 長崎市企画財政部大型事業推進室 松本 一樹 主事

旧庁舎は、昭和34年(1959年)に本館、議会棟が完成し、建物改修か建替えかを検討する時点で既に50年以上が経過していた。老朽化や大規模地震に耐えうる建物の強度不足のみならず、庁舎の分散といった諸課題があり、根本的な解決を図るために、建替え計画がスタートした。

基本計画策定にあたり、新庁舎に求める7つの整備方針を策定した。そのうちの1つに「人と環境にやさしい庁舎」を掲げ、地球温暖化対策について市が市民と事業者の先頭に立って温室効果ガス排出の削減や省エネルギー化を推進できるよう、庁舎整備を行った。

スケジュール

2014年 2月新庁舎建設基本計画策定
2016年11月新庁舎建設基本計画改定
2018年 5月新庁舎建設基本設計
2019年 6月新庁舎建設実施設計
2019年 7月新庁舎建設工事開始
2022年11月竣工
2023年 1月開庁

長崎市様
写真左から、ゼロカーボンシティ推進室・浜辺さん、
財産活用課・弘川さん、設備課・川原さん、
大型事業推進室・松本さん

山下設計様
写真左から、機械設備設計部・中澤副グループ長、
電気設備設計部・大川グループ長

ZEB化の成功要因

  • 長崎市建築部設備課 川原 光貴 技師

基本設計時点から、山下設計・建友社設計・有馬建築設計事務所特定設計 業務共同企業体よりZEB化提案は頂いていたものの、設計初期段階においては他都市の事例が少なく、50,000㎡を超える大規模庁舎の実績がなかったこと、ZEBの社会的認知度も今のようになかったため、認証取得への判断が難しかった。

計画が進むにつれて他の行政庁舎がZEBを取得するなど社会的な認知が進んだことと、設計JVの山下設計からZEBの認証取得に関して再度提案をいただいたこともあり、大型事業推進室のほか、関係部署とZEB認証取得における合意形成をし、認証費用を予算化。結果、竣工後にZEB Ready認証を取得することが出来た。

  • 山下設計 設計本部 技術設計部門
     機械設備設計部 中澤 大 副グループ長
     電気設備設計部 大川 守 グループ長

基本設計のプロポーザル時から、ZEB Ready実現を提案した。当時、山下設計では大規模建築物のZEB認証事例はなくチャレンジであった。基本設計より省エネ項目の整理を行い、ZEB認証の可能性を模索した。実施設計段階では、山下設計の中規模庁舎でのZEB Ready実績データも活用し、BEI≦0.5を達成した。成果物として長崎市に計算結果を提出し、再度ZEB化の提案を行った。工事監理段階で改めて長崎市にZEB化の実現可能性とその社会的インパクトの大きさを訴求し、理解醸成を図り、竣工後のタイミングでZEB Ready認証を取得できた。

ZEB Readyを目指すにあたって、主に以下の工夫を行った。

  • RCの柱・梁フレーム、CLTパネル、Low-E複層ガラスで日射遮蔽と外皮性能の向上を両立
  • 直達日射の遮蔽と自然採光を両立させた庇「ライトシェルフ」を採用し、照明照度を最適化
  • 人の移動や同時使用率を考慮するなど外気導入量を適正化
  • 現在のPC発熱量を基にOAコンセント負荷を見直し
  • 上記の工夫を基に空調熱負荷を精査し、空調容量を最適化
  • 中温冷水供給とすることで空調熱源機の効率を向上

決して特殊な事をやった訳ではなく、小さな省エネ工夫を積み上げていくことでBEI≦0.5を達成した。

長崎市様
写真左から、ゼロカーボンシティ推進室・浜辺さん、
財産活用課・弘川さん、設備課・川原さん、
大型事業推進室・松本さん

山下設計様
写真左から、機械設備設計部・中澤副グループ長、
電気設備設計部・大川グループ長

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